各社の反射防止素材比較記事

JASMINEプロジェクトによる反射防止素材の比較レポートを発見!

こんにちは、コプロ新製品担当の鉄平です。

 

弊社光陽オリエントジャパン㈱はカメラ用の反射防止、遮光シートの販売を行っております。

ファインシャットを始めとする自社ブランド製品や、大手メーカー素材を代理店として取り扱わせて頂いたり、とにかく弊社のサンプル帳は黒黒黒で埋め尽くされている、そんなニッチな会社です。

 

 

さて、「ファインシャット」でWeb検索をしていると、各社の光吸収素材を比較をしたレポートを掲載している資料を発見しました。「JASMINEの迷光技術II 遮光材料と反射率測定」というタイトルです。タイトルがそのままレポートへのリンクとなっていますので、見て下さい。

 

JASMINEというのはどうやら、国立天文台が中心となって進めている、日本初の位置天文衛星のことのようです。宇宙を漂う赤外カメラという感じでしょうか。宇宙産業はロマンがあっていいですね。

 

なになに・・・、半球反射率5%なら、フードの長さは2.2m必要となるが、半球反射率1%なら0.8mで良いそうです。これは衛星の小型化におおいに影響がありますな。

 

宇宙産業の測定設備ということで、光学要求特性も大変レベルの高いものなのではないでしょうか。センサーサイズとかどうなんでしょうね。

 

 

さて、本レポートにはこちらのフード内面の迷光防止処理を検討するために、各社の代表的な反射防止材料や処理を比較しています。その中に弊社のファインシャットSPも取り上げて頂いておりましため、検索にヒットしたという訳です。

 

では結果を見ながら、反射防止素材の商社として所見を述べさせていただきます!

 


反射防止比較 塗料系

最初は塗料系。皆さんも好きなカメラの反射防止処理でもおなじみですね。目に見えるところだと、レンズフードの内面に塗られている場合が多いです。

 

 

ここで取り上げられているのは、おそらくアメリカのロードコーポレーションともう一社。結果は反射率2~5%となっております。

 

塗料系の良いところは、なんといっても施工の手軽さだと思います。施工対象となる素材の導電性、非導電性を問わず、塗ったり吹き付けたりすることで、入り組んだ凹凸形状にも施工できます。

 

光を吸収する黒顔料と、表面で光を散乱させてマット地にするためのマイクロビーズを混合している場合が多いですね。施工が簡単な分トータルコストも安くなる印象ですが、光吸収性としてはそこまで高く出来ないかなと。


反射防止比較 植毛系ナイロンパイル

お次は植毛系。カメラだとミラーボックス側面や、高級レンズのレンズフード内面によく使用される処理です。

 

昔から反射防止処理の本命は植毛でした。パイルの長さの分だけ光を吸収するための3次元的に表面積を確保できます。最初に出てくる京都パイル繊維工業社「NHVソフト」の性質は、一般的な植毛加工とほぼ同じものと考えてもらっていいと思います。平米数百円という安価ながら、可視光反射率で1%以下を達成しています。厚みはパイル長+基材+接着層ですので、0.7~0.9mm程度でしょうね。(弊社にもカメラ用途に特化した同構成の植毛布「スエード0.5, 0.9, 1.2mm」がございますので、どうぞ宜しくお願いします。)

 

しかしナイロン、レーヨンなどの一般的なパイル素材を使用した場合、赤外域の反射防止効果が弱い傾向にあります。カメラのセンサー手前にはIRフィルターがあるのですが、それでも人間の目より赤外の感受性がいいんですね。そのせいか、植毛加工品を撮影すると、赤っぽく写ります。写真で見てみましょうか。

植毛とファインシャットの比較 反射防止と迷光対策

太陽光下でガッツリで撮ってみました。中央にフレアが出るくらい明るい環境です。

手前のレンズフードに施された植毛処理、赤っぽく見えませんか?

奥は右側が弊社のファインシャットで、左は更に性能を上げたファインシャット極という新開発の製品です。

 

おそらく天体撮影用などのIRフィルターを外したカメラなら、植毛はもっと赤く明るく写ると思います。いつか実験してみたいですね。


反射防止比較 植毛系カーボンナノファイバー

その他の植毛素材はすべてカーボンナノファイバーを電着した素材となっております。

ナイロンパイルの弱点だった赤外域の反射も抑えられており、まさに新世代の反射防止素材という印象です。可視光、赤外ともに1%以下と素晴らしい性能です。

 

弊社でも以前カーボンナノファイバー植毛素材の企画があり、メーカーと打ち合わせを行いましたが、企画倒れになってしまいました。

 

まずカーボンって電気を通してしまうんですよね。植毛には毛落ちという問題は必ず発生しますので、基盤に入るとショートの原因となります。これが問題。

筐体の放熱対策のため、カーボングラファイトシートを採用しているノートPCなどもありますが、カーボンカスが落ちないようフィルムでラミネートされているんです。

 

あとはカーボンナノファイバー粉塵の安全性ですね。植毛加工はどうしても粉塵として舞いますから、量産が難しいという結論でした。

もし量産可能というメーカーさんがいらっしゃいましたら、ご連絡頂きたく!


反射防止比較 メッキ系

メッキはあまり詳しくないのですが、表面に結晶を生成させ、光吸収成分のコーティングと散乱に適した表面微細形状を作っているようです。メッキということで耐久性が高そうですね。

 

特にこのウルトラブラック、反射率0.1%と記載されており、すごい数字に感じますが、「半球反射率」と記載されていない点がポイント。

 

反射率の代表的な測定方法は2つあります。ある角度から光源を照射した際に、正反射した光源のみ評価する方法と、正反射だけではなく散乱したすべての光を評価する方法です。後者を半球反射率といいます。

 

正反射のみの測定であれば、反射率0.1%以下というのもあり得る数字です。弊社のファインシャットも正反射測定であれば、大部分の可視光域と入射角で反射率0.1%以下となりますが、半球反射率となると可視光域で1%~1.5%となります。

 

これだけ大きな差が出る2つの測定方法が、反射率という言葉で一緒に扱われてしまっているのを目にします。

このウルトラブラックはどちらだったのでしょうか。本レポートで比較実験されていないのが残念です。


反射防止比較 膜系

膜というかシートですよね。弊社のファインシャットSPはこちらに入っています。

シート系は両面テープが使えますので、平面への施工は容易ですが、三次元的な凹凸への追従は難しく、施工面を選ぶことが欠点です。

同カテゴリーの製品とともに、反射率1~2%と評価されております。弊社としてはぜひ新開発の「ファインシャット極」を評価して頂きたかったです。

それにしても競合するメタルベルベットの価格が高すぎますね。3cm角で数十万円。これはおそらく間違いだと思います。


最後に

 

いかがでしたでしょうか。

 

レポートではカーボンナノファイバー植毛素材が第一候補として選定されるという結果でした。たとえ反射防止処理の費用が高くとも、衛星の小型化というメリットから考えると十分納得できます。

 

弊社のファインシャットが選ばれず残念ですが、第三者の観点から比較評価された実験レポートとして、我々としても非常に参考になるものでした。

 

 

調べてみるとこのレポートは2012年に発表されたものでした。そこからすでに6年が経過しております。各メーカーで研究が進み、新たな光学素材や処理技術も生まれております。本プロジェクトは終了したものと思われますが、次回のプロジェクトに我々の新素材を提案できるよう、営業を行っていきたいと思います。

 

ファインシャットシリーズは性能とコストバリューの両立を売りにしています。今後共ご愛用のほど、どうぞ宜しくおねがいします。