知っておきたい赤外線「服が透けて見えるってホント?!」

皆様こんにちは、世界一のブラック企業、コプロの鉄平です。

弊社は無反射の黒色素材を開発販売し、「光の反射にともなう問題の解決」と、「アートに使える美しい黒色素材」を提供しております。

 

 

 

ところでみんな、俺のケツを見てくれ。こいつをどう思う?

 

スッ

ナイススタイル?Thank you。だがそこじゃない。

これをあるカメラで撮った写真がこれだッ!!

赤外線 お尻

な、なんだ、浮かび上がるこの奇妙な柄は!?

信じてくれJ○J○、俺はこんな柄のズボン断じて着ちゃいねぇッーー!

 

 

はい、これは近赤外カメラの画像です。

  

ポケットから出てくるコレ。違うズボンだけど。
ポケットから出てくるコレ。違うズボンだけど。

さきほどのズボンは我々製造業の味方、ワークマンのストレッチパンツ。夏用の涼しげな素材のものです。そして赤外カメラで浮き出ていた柄は、「Field core」と書かれたパターン柄のポケットの裏地だったのです!つまり、ズボンの生地が赤外線で透けて、中が見えてしまったということ!?

みなさんは「赤外線カメラで服が透ける」なんて話、聞いたことありますか?

先程の事例のように、ある意味それは事実です。悪意ある使い方をしている人間もいるため、正しく対策し身を守らなければなりません。

 

弊社は近赤外線を吸収する素材の開発をしております。「透過」と「吸収」という違いはありますが、日頃から近赤外を取り扱っております。そのあたりの知見を織り交ぜながら、この問題の調査結果と対策を皆さまとシェアしたいと思います。レッツゴー。

赤外線とは?そして近赤外カメラとは?

今回問題となる赤外カメラ、その説明をする前に少し赤外線のご説明もしなければいけません。

光とは電磁波の一種です。人間は波長域380~750nmの範囲の電磁波を、それぞれの色の光として視覚で捉えています。短波長380nm側を紫、長波長750nm側を赤色として認識するのですが、赤色750nmを超える波長域は目に見えません。これを赤外線と呼んでいます。赤く見える範囲を外れてるから赤外線(IR = Infrared)。逆に紫より短波長で見えない範囲を紫外線(UV = Ultraviolet)と名付けております。

可視光域のスペクトル

 "画像はWikipedia「 可視光線」より"

 

 赤外線も可視光域に近い方から、近赤外(750~2500nm)、中赤外(2500~4000nm)、遠赤外(4000nm~)と名付けられており、性質が全く異なります。カメラとして捉えたときの見え方も別で、たとえば遠赤外カメラはそのままサーモグラフィーです。空港の入国審査前の体温チェックなどにも使われていますね。遠赤外線=熱の放射を撮影しているので、ある意味これも服を透過するカメラとも言えますが、見え方は全く異なりますので本ブログでは除外しましょう。

 

今回問題になるのは目で見える波長範囲よりわずかに長波長側、ずばり750~1000nmあたりを撮影できる近赤外カメラです。

 

一般的なデジタルカメラのシリコンセンサーは、人間の目で見える波長約750nmを少し超えた1000nm程度の波長まで感度を持っています。このままだと人間の見え方と写真にずれが生じてしまうため、人間の目の感度に合わせ、センサーの前に750nmから先をカットするフィルターが付けられています。うっすら青く見える、透明なフィルターです。これがセンサー全面にピッタリくっついています。

(赤外近辺の発色が重要な天体撮影用途として、このフィルターが無い特別仕様のカメラも販売されています。ニコン D810Aなどが有名です。)

改造近赤外カメラ
弊社所有の近赤外改造カメラ

この赤外カットフィルターを外し、逆に750nm以下の可視光をカットするフィルターを取り付けると、750~1000nmが見える近赤外カメラが完成します。市販のカメラにそのような改造を行ったものが個人売買などで流通していますが、カメラ内部の改造となるので、見た目で判別することは困難です。気をつけようがありません。

赤外透過フィルター

IR透過(可視光カット)フィルター。可視光域を通さないため、見た目には光をほとんど通さない黒いガラスです。IR透過フィルター以外にもカメラのレンズ先端に付ける黒いフィルターはありますので、そのようなカメラを見ても誤解なきよう…。

IRカットフィルター。可視光域を通しますが、赤外域+赤の波長域も若干カットしているせいか、うすく青みがかっています。


実験!近赤外カメラによる衣類の透け方

ここからは衣服は近赤外カメラで見ると、どのように見えるのかを調べていきます。衣服が透けたかどうか調べるには、下に近赤外カメラでもはっきり見える柄のものを着て、その柄が透けるかどうか観察するのが良いでしょう。

ラバープリントで赤外でも柄がはっきり見えるTシャツがありました。かわいいながらも猫の視線に圧を感じるデザインがとてもオシャレです。※モデル私物

 

ボタンやら装飾のある前側は避け、背中で衣類の透けを判断しましょう。柄が背中に来るように前後反対に着て、これで準備完了。以下、白黒写真は近赤外カメラで撮影した写真となります。


そして調査のために、古着屋で色々な服を買ってきましたよ。青のベロアのスカートを除き、どれも春夏に着れそうな薄手の素材です。

 

それでは一気に結果を公開します!!

綿100% <透け度☆> 今回の調査で一番透け感が少なかったが、それでもわずかに中の柄が見える。

綿50% ポリエステル50%  <透け度☆> 緑のプリント部が近赤外吸収している。

ポリエステル100% <透け度☆ みんな大好きワークマンのシャツ。

素材不明(おそらくレーヨン) <透け度☆☆>  緑のプリント部がうっすら写る。

ポリエステル100% <透け度 今回の実験でもっとも透過が大きかった服。

レーヨン100% <透け度☆>

素材不明(おそらくポリエステル) <透け度☆>

ベロアのスカート(素材不明) <透け度☆> 厚みのある生地なのに透けたため、大変驚いた。

これは驚きの結果です。どの衣類も程度の差こそあれ、中のTシャツの柄は透けてしまいました。個人的に最も驚いたのがベロアのスカート、目で見ると複雑な光沢があり厚みのある生地にも関わらず、このような見た目になるとは。要注意です!!

赤外線盗撮の対策を考える

さて、こちらのテストを踏まえまして、どうやって赤外線カメラによる服の透過を防ぐことができるのか考えていきます。

正直かなり苦しいです。テスト結果の通り、どの素材にも多かれ少なかれ透過する性質があり、決定的な対策がありませんでした。そんな中でのささやかな提案ということでシェアさせていただきます。

対策1, 綿(コットン)の衣類を選ぶ

左 綿100%          右 ポリエステル100%
左 綿100% 右 ポリエステル100%

今回の実験で最も透けなかったのが綿100%のシャツでした。最も近赤外線を透過してしまったポリエステル100%のシャツと比較するとその差はこの通り。

どちらも衣類の柄は完全に見えなくなり、真っ白なシャツとして白く写っているのですが、綿の方がより透過が少ないようです。おそらくポリエステルと比較して、表面で近赤外を反射する成分が強いのでしょうか。


また綿100%の黒いシャツで、ごくまれにしっかり近赤外を吸収し、黒く映るものも存在しました。黒いシャツが30種類あれば、1種類くらいの割合でしょうか。かなりレアですが、近赤外を吸収する生地は存在します。

春夏物が出回る時期になりましたら、ユ○クロやし○むらなどの具体的な製品で、近赤外を吸収する、盗撮対策に優れた夏服をピックアップしてご紹介したいと思います。

対策2, スカーフをプラスして、肌に密着しない着こなしをする

実験の通り、ほとんどの衣類は近赤外を透過してしまいます。しかしこの透過光はすりガラス越しの見た目のように散乱する光のようです。下に着ている物の柄も、距離に応じて散乱しはっきりと見えなくなります。

この性質を利用し、外に一枚、肌に密着させないフワリした着こなしをして頂くのはいかがでしょうか。

下の動画は、実験でも最も透けやすかったポリエステル素材の薄いスカーフを用い、距離に応じた透け方を確認したものです。

スカーフなどの薄いものでも、体に密着させないようにふわりと巻いて頂くだけで、下地の透けをある程度防ぐことができそうです。


最後に

皆様、今回のブログの内容はいかがだったでしょうか。

弊社は普段可視光~近赤外の吸収する素材を開発しておりますが、今回の実験でも分かる通り、近赤外を吸収する布や染料というのはなかなかありません。

産業用途として近赤外を吸収する素材「ファインシャット」や「近赤外吸収植毛布」というラインナップはございますが、かたや破けやすかったり、かたやゴワゴワしていたりと洋服には少し縁遠い素材です。あと値段が高いです。Tシャツで1万円くらいになってしまうでしょうか。

右が近赤外写真。手に持っている素材が「ファインシャット」。
右が近赤外写真。手に持っている素材が「ファインシャット」。
黒く見える布が、近赤外吸収植毛布IR1500。
黒く見える布が、近赤外吸収植毛布IR1500。

いつか衣類にも使えるようなお手軽な近赤外吸収生地を開発したいと思いますので、弊社活動をこれからも応援よろしくお願いいたします。