謎多きベンタブラックの正体に迫る!!

謎多きVantablackの正体に迫る!!

光学ファンの皆様、こんにちは。コプロ新製品担当の鉄平です。

 

弊社は内面反射防止用途の光吸収シートの開発、販売をしている企業ですが、このような素材を販売していると避けて通れないのが、競合他社の表面処理「Vantablack」!

 

イギリスのサリーナノシステムズという企業が開発した表面処理で、なんといっても特筆点はその黒さ!世界で最も黒い人工物として認定されておりまして、まさに黒のシンボル的存在。当然内面反射処理としても王者として比較対象になります。先日のフランクフルトショーでのBMWの展示、「Vantablackによる世界一黒い車」も話題になりましたね。

 

でも意外とその実態は知られていないんです。Vantablackに関するコメントなどを見ても、数々の誤解があるようにも見受けられます。世界最高の黒ですから、大変有用な素材です。しかもこんなに有名なのに、実物を見たことがある方はほとんどいません。それはなぜでしょう?

 

という訳で今回のブログでは、主にメーカーカタログの内容を通してVantablackの紹介を行い、製品や光吸収素材にまつわる誤解とともに解説していきたいと思います。

 

本ブログで使用しているVantablackのカタログは、Surreynanosystems社ホームページの上部にあるDownloadsをクリックすれば入手できます。

Ventablackの全反射率はいくつ?

Vantablackといえばこのキャッチフレーズ、「可視光の最大99.965%を吸収!」です。言い換えて、「99.965%の光吸収率を誇る」とも紹介されています。おお、わからない人でもすごそうな気がします。はて、光吸収率とは?

 

対象物にあたった光は、反射するもの、対象物に吸収されるもの、透過するものの3つに別れます。このうち反射光の強度や透過光の強度は計測できますので、反射率、透過率は一般的な指標です。だから私にとっても光吸収率というのは、正直あまり馴染みのない言葉でした。

 

ちょっと脱線しますが、「全反射率」についても言及させて下さい。反射した光がどのような角度で飛んでいくかは表面の凹凸や性質により異なります。あちこちに飛んだ反射光を再び一点に集め、全ての反射光の合計として計測した数値を「全半球反射率」とか「全反射率」と呼びます。概略は下図の通り。可視光域の全反射率は、そのまま黒さの指標となる数字と言っていいでしょう。 

全反射率試験の概要
全反射率試験の概要

それを踏まえてVantablackのカタログを見ますと見つけました。

「特徴 全半球反射率0.036%(700nmの場合)」。

 

つまり透過は無いということで、

「1マイナス反射率0.036% ≒ 99.965%の光吸収率」

としていた訳ですな。

 

しかし、カタログを見てみると、各波長における全反射率のグラフが記載されてありますが、とても0.036%という水準にあるようには見受けられません。

波長ごとの全反球反射率の代表値も記載がありますが…。

250nm 0.4%
550nm 0.13%
700nm 0.10%
1400nm 0.10%
5μm 0.12%
14μm 0.4%

全然0.036%じゃないやん…。グラフを見た感じですが、可視光域の波長の全反射率を平均するとだいたい0.2%をちょっと上回るくらいですかね。

 

これがVantablackの見た目的な正しい全反射率になると思います。もちろんこの数字がすごい値であることは間違いないです。例えば光学機器の反射防止処理として使用される黒マットのアルマイト処理でも、全反射率はだいたい5%くらいありますので。

Vantablackには施工条件がある

次のテーマで説明しますが、Vantablackにはバリエーションがあります。ここでは最も黒い無印Vantablackについて話を進めて行きます。

 

Vantablackの名前は、Vertically Aligned NanoTube Arrays + Black という造語で、名前の由来にもなっている「垂直に並んだカーボンナノチューブ」がその黒さの秘密となっています。

 

対象物の表面にカーボンナノチューブの森のような集合を化学蒸着によってニョキニョキと成長させるわけですが、その際の温度は約430℃。つまり処理する基材にはそれ以上の耐熱性があることが条件となるわけです。そして処理する蒸着窯のサイズにより、施工可能な最大サイズも限定されるでしょう。

 

またカーボンナノチューブ自体に取り扱いの難しい部分がありまして、アスベスト同様の吸引による毒性が指摘されています。また接触や摩耗に耐性が無いため、必然的にVantablackを使用した製品は隔離された環境での使用に限定されます。

 

一般ユーザーに手が届かない理由は、このあたりのハードルの高さに原因があるでしょう。「~~にVantablackを塗ればいいのに。」というコメントをよく見ますが、そう簡単ではないのです。

Vantablackにはバリエーションがある

Vantablackについて語られる際に、最も多い誤解がバリエーションの混同かと思います。上で説明した最も黒い素材、無印Vantablack以外に、処理工程も光吸収性能も全く異なる黒色処理にもVantablackというネーミングがついているのです。紹介しましょう。

 

 

○Vantablack S-VIS

 

スプレーによる塗布と100~280℃の温度と真空処理工程により、対象物の表面にランダムにカーボンナノチューブを生成させる処理だそうです。

となると、Vertically Alignedじゃなくて、Randomly Alignedですが、Rantablack にはならないんですね。

 

3次元形状にも施工可能とかいていますので、Webで見る多くの代表的な作例はこちらで処理されている可能性が高いです。

 

カタログのグラフを見ると可視光域の全反射率の平均は、無印の0.2%ちょいに対して大体0.3%くらいのように見えます。

 

カーボンナノチューブ使用かつ接触耐性無しとのことで、こちらも隔離された環境での使用範囲となりそうです。

 

 

○Vantablack VBx2

 

カーボンナノチューブを使用していない黒色塗料です。ついにVertically Alignedでも、 NanoTubeでも無く、Vanta要素が0になりました。

フランクフルトショーでのBMW「世界一黒い車」もこちらで塗装されているようです。

 

しかしカーボンナノチューブによる無印と混同され、ネットユーザーに多くの誤解を与えているのが見受けられます。例えば「99.965%の光を吸収するVantablackで塗装されたBMW X6」というような内容です。

 

さて性能はというと、カタログの全反射率グラフより、可視光域の平均全反射率は1.1%ほどのようです。低反射塗装としても優れた数字だと思いますが、低反射塗料は耐接触性能と低反射性能がトレードオフになる傾向があります。耐接触性能を付加させるためのコーティング(マイクロビーズなど)が、低反射性能を持たせるための表面の細かい凹凸層を覆ってしまうのです。

 

そのため、耐接触性能を持たせた反射防止塗装は、私が今まで見た感じでは全反射率3%程度になってしまうかなと思っています。

 

そのような理由から、低反射性能に優れたVBx2も耐接触性能は期待できないと思われます。カタログにも「人が触る場所には適していません」ということが書いていますしね。フランクフルトショーでの展示の見せ方も大変だったと思われます。

最後に カーボンナノチューブの未来は明るい

以上、大変長くなりましたが、謎多き世界最高の黒色処理、Vantablackについての理解を深めることができたでしょうか?

 

このようにカーボンナノチューブ製品は生成のための条件や健康面での問題点など、なかなか一般環境での使用が難しい面もありますが、未だ可能性に満ち溢れた素材です。

 

このブログを執筆している19年9月時点でも、なんと「Vantablackの10倍黒いカーボンナノチューブ素材の開発にMITが成功!」というニュースがあり、低反射用途でのカーボンナノチューブ活用の大きなアップデートとなりそうです。

 

 

そんなカーボンナノチューブがもたらす未来に期待しつつ、旧時代的な弊社の製品ファインシャットシリーズもぜひ宜しくお願いします。「極」グレードは厚み0.37mmのウレタンスポンジ。可視光域の全反射率はなんと0.7%!テープ付きですので、切って貼るだけで手軽に使えますよ~。

 

また、車の外装に貼っていただくことで、BMWの「世界一黒い車」の記録更新もできますよ~。話題作りにおひとついかがですか~?

 

おしまい

 

>>ファインシャット極の紹介ページはこちら